日本人が心地よい暮らしを インテリアショップ「バーデンバーデン」

東京目黒区・学芸大学駅から徒歩5分の住宅街に、オレンジ色の看板を見つけた。日本のクリエイターのアイテムを揃えるインテリアショップ「バーデンバーデン」だ。
オーナー兼チーフクリエイティブオフィサーの森千鶴子さんが古い一軒家を借りて店舗に作り変えたのは、11年前。クリエイターのプロデュース業から始め、作品を販売するショップに進化させた。「“これからあるべき生活スタイル”をクリエイターと一緒に考え、発信していく場にしたいと思っています」
店で提案する家具は、都会の住宅事情を考慮した小ぶりなサイズ。
「ヨーロッパ家具のサイズや色は、日本の都市部に多く見られる狭くて天井が低い家に合わないと思います。日本古来のタタミの暮らしに戻った方が良いとは思いませんが、イスに座る暮らしの中でも、日本人が心地良さを感じるものがあるはずです。もっと日本の良さが発揮される世界観を打ち出したい。『こういう風に暮らしたかった』という日本の美意識を見せたいと思っています」
子ども時代にヨーロッパ暮らし 日本の美意識に憧れ
日本らしい美意識にこだわる森さんの原点は、両親の転勤でヨーロッパに暮らした子どもの頃にある。海外で清少納言の随筆『枕草子』を読み、「春はあけぼの……」と始まる知的な美意識に憧れの念を描いた。
「ヨーロッパのいろいろな国を巡りました。成田空港に帰ってすぐ受ける店員さん達のきめ細かいサービスに、子どもながら微妙な差異、日本の美徳のようなものを感じました。西洋の世界はある意味、大あじ。日本では太陽、木々の色も違い、四季により移り変わる景色に心地良さを感じました。外国人のような視点で日本の良さを見ていたのだと思います」
また海外で過ごした思春期、曖昧さを好まない西洋文化の中で、「Yes,No」とはっきり主張する事を求められて苦労したそうだ(これは後にディレクション能力として活かされることになる)。
帰国して大学に進んだ森さんは、卒業後、野村総合研究所に研究補助職として3年間勤務。男女雇用機会均等法の施行前、「会社員としてバリバリ働きたい」とキャリアや給料アップを目指し、出版社や女性が仕事を任されやすい中小企業に転職。「私の20代は、気持ちが上がったり、下がったり、悩みの多い時期でしたね」
30歳直前から夫転勤に伴い、香港で5年間暮らす。子育てをしながら、昔の知り合いのツテで、翻訳や通訳業にフリーで従事。「なかなかキャリアにつながりませんでした。思うような仕事ができず、キャリア的にはウツウツとした日々でした」
一般職と総合職、中小企業と大企業、正社員と契約社員そしてフリーの通訳としての仕事、ありとあらゆる立場を経験した森さん。最終的には起業し、自分の店を持つことになる。(次ページへ続く)



