戸籍で人生の経路が、住民票でその人の現在が分かる
前回は家族構成を調べるために戸籍や住民票を使うという話をしたところで終わりましたが、普段皆さんはどれぐらいの頻度でこの二つの公簿に接しているでしょうか。「入籍したとき以来まったく見ていないなあ」なんて人のほうが普通は多いのですが、探偵は年がら年中これらの公簿を眺めています。
戸籍は人生の経路が、住民票はその人の現在が分かります。戸籍謄本さえ手に入れば親兄弟が全て判明するかといえばそんなことはありません。戸籍には「夫婦とその子供」しか載っていないので、結婚すれば親の戸籍から外れて新しい戸籍を作ることになるため、既婚者にこの手は使えません。
そこで、「除籍謄本」という、その人物がひとつ前に載っていた戸籍を調べることになります。一つ一つ紐を手繰り寄せるように辿っていけば、三親等ぐらいまでなら全て調べられます。
役所の窓口では第三者が戸籍や住民票の請求にやってくると、誰が何のために必要なのかと根掘り葉掘り質問され、身分証の提示を求められたりもしますが、請求そのものは自由に出来るという中途半端な状況です。
それほど昔とは言えない時代まで、こんな個人情報の塊ともいうべき書類が誰でもほとんど自由に交付されたのですから、のどかというか無防備というか。現在でも行政ごとに極端な温度差があり、「そんなに簡単な手続きで大丈夫なの?」と自分の立場を忘れて思わずツッコミたくなるような市町村もあります。
探偵は「差別調査」は行わない
こうして応募者の身内について調べることは可能なのですが、裏社会の住人である探偵でも依頼を断ることがあります。それは「応募者の戸籍を調べて欲しい」「本籍地がどこか知りたい」という直接的な依頼です。
この依頼を受けてしまうと、探偵は免許を取り上げられてしまいます。これは探偵業法で禁止されている「差別調査」に該当する可能性が高いからです。
かつていくつかの日系メーカーでは採用時に差別があったとして裁判にまで発展しました。彼らは「探偵が勝手に調べた」の一点張りで逃げ切りましたが、依頼者にハシゴを外された探偵業界は差別調査にそっぽを向くようになったのです。
普通の探偵社がこの依頼を受けることはまずありません。「なぜ戸籍が必要なんでしょうか?」と質問し、もっともらしいことを言われても全てお断りします。それは正義感でも何でもなく、はした金欲しさに免許を失うリスクを負う理由がないからです。通常の調査でも本籍地が判明しても、普通は依頼者にお伝えすることはありません。(次ページへ続く)


