門戸は開けど該当者なし…IT系営業マンは、手土産持参のスーパーマンでなければ転職が難しい時代へ
高校時代に教わった体育教師が、プロ野球の某球団の入団テストを受けに行った経験のある人で、授業中にそのときのことをよく話してくれた。
遠投、短距離走で一次選抜された後、最終選考はバッターボックスに立たされてのフリーバッティング。バッティングピッチャー(打撃練習のために投げる専門の投手)が130キロ台のストレートを投げ込んできて、チャンスは10球。ただしヒット性の当たりではダメで、何本ホームランにできるかで合否が決まるのだ、と。
こんなプロ野球の話をすると、一般人の転職の話とはまったく関係のない、雲の上の世界の話をされているように感じる方もいらっしゃるかもしれない。だが、私がここ1年ほど、IT業界で営業系の求人依頼を受けるたびに、そうした過去に聞いた話が頭の中でダブって仕方がなかった。要するにどちらも、本当にバリバリの即戦力のハイスペック人材しか要らないわけで、門戸は開いてはいるものの、「本当に採る気あるの?」と思うほど狭く感じたからだ。
業績低迷で将来に不安を覚え、転職活動を始めた20代のERP導入担当営業マンAさん

さて、今回とりあげる最初の人物は、3ヵ月ほど前に転職を決めたAさん。当初勤めていたのは大手流通系企業の資本が入った中堅SIerで、入社後6年ほどの間、主にERP導入プロジェクトを受注するための営業が主な業務だった。ご本人的には仕事に不満はなかったが、国内主要企業のERP導入需要の一巡とリーマンショックが重なり業績が低迷、将来に不安を覚えて転職活動を決意したのだ。
ところが、当時私のところに入ってくるIT業界の営業職の求人案件は、ことのほかハードルの高いものが多かった。たとえば「(IT以外の)◯◯業界での勤務経験またはそれに相当する業務知識」とか「役員クラスへの商談経験」など、若手営業経験者ではとても満たせないスペックのものが多かったのだ。
そんなスペックではそうそう人は採れまい。そう思った私は、求人を出してくる企業にその背景を根掘り葉掘り聞いてみた。すると、企業はどこも受注が減退し、「ITエンジニアはダブついているがアサインする仕事がないのが現状だ」などという話がポロリと漏れてくる。
さらに突っ込むと、「エンジニアは要らないが営業はほしい、ただし、仕事を取って(あるいは「持って」)こられる人限定だけど」という本音が飛び出した。
だが、そんな都合のいい人材は、業界中探してもそうそういない。いたとしても、今在籍している会社が簡単に手放すとは思えない。それなのに、多くの会社がそんな人を喉から手が出るほど欲しがっているというのが、近年のIT業界の苦境の現実であった。(次ページへ続く)


