1つの会社に居座ってキャリアを作る
最近、会社を2、3年で辞め、すぐに次の会社を探す転職常習者が増えています。なかには、30歳を前にしてすでに2、3社目という強者もめずらしくありません。転職情報サイトにも、早い段階で会社に見切りをつけて転職しよう、というようなコピーが目立ちます。「25歳までは第二新卒」「30歳で自分のキャリアを見つめ直す」「35歳が転職のラストチャンス」といった具合です。1つの会社に長く居過ぎると他所で通用しなくなる、売り時を逃すといい条件で転職できなくなる、といった話も耳にします。
でも、本当に会社に早く見切りをつけて行動しなければ、転職できないのでしょうか。1つの会社で長期間働き続けることが、転職する上でマイナスになるのでしょうか。
これまた大いに疑問です。「35歳転職限界説」同様、転職情報誌や人材紹介会社に踊らされている気がしてなりません。なぜなら、私は、はじめて勤めた会社に11年間居座った後、35歳で転職したからです。そして、11年間居座っていたことがマイナスだったのかといえば、決してそんなことはありません。むしろ、はじめての会社に11年間勤めていたことが、その後の転職人生に大いに役立っています。11年間同じ会社に勤めていたからこそ、その後6回も転職できたし、いまの自分があると思っているくらいです。
では、1つの会社に勤め続けることで得られる最大の利点とは何でしょう。それは、他所でも通用する本当のキャリアを身につけられることです。単なるスキルではない、本当のキャリアを身につけることができるのです。よく、スキルとキャリアを誤解しているケースを見受けます。でも、この2つはまったく別物です。そして1年や2年勤めただけでは、本当のキャリアは身につかないのです。

たとえば、プログラマやSEの場合、1、2年勤めれば、たしかにプログラム言語、OS、ネットワークなどの新しい技術を習得できます。しかし、それは単なるスキルを身につけただけ。キャリアを身につけたわけではありません。スキルは比較的短期間でも身につけられますが、キャリアを身につけるにはある程度まとまった期間が必要になります。だから、キャリアを身につけるのは難しいのです。スキルを身につけるように簡単にはいきません。
私の場合、1つの会社に11年間勤めていたことで、メインフレームからオフコン、UNIX、さらにはOSからネットワークと、システム開発にかかわるほとんどの仕事を経験することができました。つまり、SEに必要なスキル全体を学ぶことができたのです。そして、これこそがキャリアなのです。いろいろな実務を通して学んだスキルの全体が、キャリアになるのです。
一方で、もしも会社を2、3年で辞めていたら、SEに必要なシステム開発全般にかかわる仕事を経験することはなかったでしょう。ごく一部の限られた技術を経験して終わっていたと思います。それでは単なるスキルを身につけただけで、キャリアを身につけたことにはならないのです。

