「個人でも買える」を追求した eラーニング用ソフトウェア制作会社
「eラーニングをすべての人に」というコンセプトを掲げる株式会社キバンの社長、1971年生まれの西村正宏さんは、大学でインターネットと出会って以来、ウェブシステムの構築に精力を注いでいる。
同社が開発したeラーニング用ソフトウェアは、以下の3種類だ(他3製品は、近日販売予定)。
①パワーポイントと音声をワンクリックでFlashファイルに変換し、eラーニングの教材を簡単に作成できる『PPT2Flash』。
②プログラミングができなくても、入力するだけで、オンラインテストやアンケートフォームを作成できるツール『QuizCreator』(自動採点も可能)。
③数千、数万人規模の組織向け、eラーニングの実施、採点、集計ができる学習管理システム『eLearningManager 4U』。
(具体的な活用方法:たとえば大手予備校が導入した場合、予備校で行われるすべての授業をインターネット配信し、志望校、生徒別に、必要な授業を抽出、受講管理する機能を持っている)。
①②は、 1ライセンスを3万円以下で購入することができる教材作成ツール。価格が数百万円もするソフトウェアとは違い、個人が購入しやすい価格を追求したことが、同社の大きな特徴だ。
キバン社に営業マンはいない。従業員20名は全員、システム開発者やサポートスタッフだ。お客様はウェブサイトを見たり、ソフトウェアを使い、その利便性を知って、問い合わせる人ばかりだ。
電子回路を独学、電化製品を「自分で作れた」高校生時代
西村さんは、学生時代からシステム設計が好きだったという。高校生の時、数学の家庭教師としてやってきた、電子回路の研究をする大学院生に影響を受けた。「数学は勉強せず、電子回路の設計をひたすら習っていました」。夏休みには、大学の図書館に入り浸り、電子回路の見本が書かれたマニュアル書を片っ端から眺め、いろいろな電化製品を自分で設計して作っていた。
高校の文化祭では、教室いっぱいに広がる直径8メートルのプラネタリウムを設計、制作した。すべてリモートコントロールで動くプラネタリウムを自作。星を映しながらテーマ音楽を流すため、スピーカー、アンプまで、部品パーツを組立て、クラスメイトと一緒に作ったという。
「すごく星がきれいに輝き、教室中から『おーっ』という歓声が上がりました。自分が作ったもので皆が感動したことが、とても嬉しかったです」。
「納得いかないことに向かうことが、僕のエネルギー」
「大学受験がなければ、そのまま電子回路を描き、機械を作る仕事をしていた」という西村さん。大学に進学後、下宿先の先輩に勧められるまま、スキー部に入部した。スキーはまったくの初心者で、退部も考えたが、同級生の女子に「転ぶのは上手くなったね」といわれ、西村さんの闘争心に火がついた。それから、1秒でも多く雪上にいて、1センチでも長く滑ることを実践し、スキー検定SAJ1級に合格するほどに熱中した。大学卒業後、「大学院に進めばスキーがあと2年間続けられるのではないか」と、大学院に進学した。
大学院の研究で使う洋書を書店で探すと、20ドルの本が、輸送料、関税、為替レートを加味すると1万円もする。「輸入で価格が5倍になるなんて、納得できませんでした。このような憤りは、僕が新しい方法を生み出すときのエネルギーになるようです」。
1990年代半ば、まだインターネットが完全に普及していない時代、nifty経由の通信網で洋書を直輸入すると、定価20ドルのままで買うことができた。その頃は、大学の先生方の洋書購入を代行していたそうだ。
自分が作ったものを喜んで使ってくれる人がいる
必要なものは自分で作る、これは西村さんの基本的な姿勢だ。他大学のウェブサイトが普及した時期、西村さんの通う大学にはウェブサイトがなく、「自分たちで作ってしまおう」と作り始めた。大学内すべてのゼミ用ページを制作し、ID、パスワード、大学専用メールアドレスを発行すると、卒業生、在校生からの反響は大きかった。励ましのメールだけでなく、「大学ウェブサイトの運営を手伝いたい」という学生からの申し出もあり、ウェブサイト管理を担当するボランティアスタッフが増えていった。「自分たちが作ったものを喜んで使ってくれる人がいて、嬉しい」という喜びもつかの間、西村さんは、運営面での課題に直面するようになった。



