前回は、「クリエイティブ業界への転職希望者の、相当数がバカ」というお話を…。いえ、失礼しました。出版業界への転職希望者のうち、失敗するパターンの解説でした。
ただ今、事実とは言え、不適当な表現がありましたことをお詫びします。というわけで前回の続きです。さあ、語らせてもらいましょうか。
失敗する理由4:「クリエイティブ」を勘違いしている
正直に申し上げると、私は「クリエイティブな仕事」イコール「マスコミ」とする発想が大嫌いです。
私が編集プロダクションに入る前にしていた仕事は日用雑貨の実演販売でした。という話をすると、「なぜそんな仕事をしている人がクリエイティブな仕事を?」と驚かれます。
実演販売を「そんな仕事」と言われている時点で内心では相当ムカッと来ています。こう言っては何ですが、実演販売もクリエイティビティが問われる仕事だった、と自負しているからです。
今回は別に「実演販売講座」ではないので詳細は避けますが、あれはあれでどうやって客を呼び込むか、頭を使う仕事でした。別に怪しげな調理器具だの、洗剤ではなく、かと言ってバカ売れする商品でもありません。ましてサクラなんていませんから、実演販売をする自分があれこれ考えなければならない。実際に、あれこれ考えてお客さんに声をかける仕事は十分にクリエイティブであり、おもしろい仕事でした。
そもそも、クリエイティブとは与えられてどうこう、という問題ではなく自分が考えてこその話です。ならば、業界はどこであっても、本人がいろいろと考える仕事であれば、私はクリエイティブな仕事だと思います。それをことさら、マスコミだけクリエイティブで偉い、と思い込む一部の関係者やそれに無条件で憧れてしまう業界外の社会人は相当どうか、と思うのです。
失敗する理由5:単純作業を嫌がる
それにどんな仕事であれ、まずは下積みから。私が入った編集プロダクション(出版社の下請けと見てそう大きく間違っていません)では、最初の仕事はアンケートの発送作業でした。ライターになって、某週刊誌では、ひたすら全国の大学・高校にアンケートを送ったり、電話をかけて確認作業をしたり、単純作業はまあ多かったですね。
ライターでこの種の単純作業にかかわる人を、編集部によってはデータマンと呼びます。ライターではあるのですが、実際には、あちこちに電話をかけて、アンケート結果を集計して、エクセルデータにまとめて、とまあ創造性のカケラもない、事務作業員です。
はっきり言いますと、おもしろみのない仕事です。もっと言えば、つまらないです。ただ…、こういう単純作業、つまらないとは言いながらも結構、勉強になります。ライターであれ、編集者であれ、通過儀礼、修行期間と思った方がいいでしょう。
私の場合、ライターになってすぐ、本を出す機会に恵まれましたが、それでも某週刊誌でデータマンの仕事ができたからこそ、今の自分があると考えています。

ところが、こういう単純作業を嫌がる人がこれまた多い。出版業界志望者の人にデータマンの仕事を紹介しても、脱落していく人が冗談抜きに多いです。あるライター志望者に至っては、チーフ格とよほど相性が悪かったのか、チーフ格から「紹介してくれた石渡さんにも言いたいのだけど」と、延々2時間も愚痴をこぼされました。
話を振った時点で敬遠してしまう人も多いですねえ。おかげでどの編集部でも、中堅のライターや編集者がいつまでもデータマンを兼ねる羽目になります。
どんな仕事でも最初は雑用から始まるものです。それは出版も例外ではありません。
ところが、出版業界だと「すぐクリエイティブなことができる」と過剰な期待を抱く人が実に多い。で、いざ内部に入ることができても、単純作業ばかりでしかも給料は安い。期待の裏返しは失望につながり、というパターンがもうできています。
土台がなければ、やはりどんな仕事もできませんよ。うん。



