有機農業で独立 若者が参入できる仕組みを模索中

自然農園レインボーファミリーの笠原秀樹さんは、千葉県流山市で有機農業を始めて7年目、年間約60種の野菜を栽培し、放し飼いのニワトリを約300羽飼っている。
野菜は無農薬、無化学肥料、自家製の鶏糞とボカシ肥料(米ぬかや魚粉等を発酵させたもの)で育て、日当たりの良い小屋で放し飼いするニワトリには、国産くず麦、野菜くず等のエサを与えている。
野菜の苗を育てる温床にも、生き物の性質を上手く活用する。寒い冬場、一般的には電気で温床を作ることも多いが、笠原さんの農園では落ち葉、米ぬか、鶏糞を混ぜて水を加え、発熱を促がす踏み込み温床を利用。その踏み込み温床は有機分解され、種まき時の土に返るそうだ。
「うちは循環型農業なので、できるだけ外から買ったり、不要物を出したりしないようにしています」
最近、日本の農業には小さな変化があるようだ。農業以外の仕事を経験した若者が「物語のある農作物を作り、お客様に直接食べてもらいたい」と、農業を始めるという。インターネット通販で消費者に直販する農家も増え、農協など既存の流通システム以外の販売経路も増えている。笠原さんも、有機野菜と放し飼い卵の宅配セットをネット通販している。
「自分で作ったものを自分で売る仕組みが整えば、農家がもっと増えていくと思います」
環境問題をきっかけに農業へ スローライフを手に入れる
笠原さんのような30歳前後の若い農家には、新しい価値観が生まれている。
「日本の農家の年齢は、65歳以上が60%を占めます。40代以下の農家が少ないのですが、就職氷河期を経験した30歳前後の世代から、非農家出身でも新しく農業を始める人が少しずつ増えています。65歳以上のベテラン農家と、30代前後の若手農家の価値観は、まったく違います。
高度経済成長に乗って農業をしていたベテラン層は、いっぱい畑を耕して多くの収入を得ることがステイタスでした。それに対し、僕らのような30歳前後の農家は、大規模経営より、小さく楽しく生活する家族経営というライフスタイルを選んでいます。収入よりも、家族を大切にしたい、環境に配慮した農業がしたい、過度なストレスなく暮らしたい等と思い、農業を目指す人が多いのです」
笠原さん自身も、農家になってスローライフを手に入れた。自宅と農地は、徒歩10分圏内。通勤時間はなく、家族と過ごす時間が長いという。
「昼間、子どもが畑に遊びに来ると、農作業を中断して子どもと遊んだり、24時間を自分のペースで使うことができるようになりました。生活と仕事の区別がないので、働いているようで働いていないような、休んでいて休んでいないような……。仕事に追われている感覚はないですが、日曜祭日も関係なく農作業をするので、完全な休日はなくなりました」
子どもの頃から自然の多い環境で育った笠原さんが、農業を始めるきっかけは環境問題からだった。高校生のときにナチュラリスト・C.W.ニコル氏の本を読んで興味を持ち、大学で農学部林学科に進んだ。大学卒業後、米国カルフォルニアの農業実習プログラムに参加。広大なカーネーション農場で、カーネーションを収穫、出荷する日々を送った。
「周囲は、見渡す限り『どこまで続くのだろう?』というような広大な農地で、ヘリコプターで農薬を撒いていました。作物に対する愛着が全然感じられず、『このような農業は、何かが違う』と思っていました」(次ページへ続く)




