管理職は、気心の知れた有能な部下と一緒に転職したがるもの
いまの会社(注:執筆時)には、以前勤めていた会社で、私の部下だった人間が2人いま す。1人は3回目の転職先で、もう1人は4回目の転職先で部下として働いてくれていた人間です。いまの会社への転職を決めたとき、すぐに2人の顔が思い浮かびました。気心の知れた有能な部下が欲しかったからです。
昔の上司に誘われて転職する。転職ではよくあるケースです。新しい会社に管理職として転職する場合、だれでも気心の知れた有能な部下が欲しいものです。ベンチャー企業のように、慢性的に人材が不足している場合は なおさらです。
誘う側にしてみれば、能力がわかっているだけに、安心して仕事を任せられます。それに、採用コストもかかりません。実は、一番安全で確実な採用手段なのです。6回の転職で、部下を連れての転職を3回経験しています。でも、部下を連れての転職には、転職先の事情や個人の事情などいろいろな要素が絡むため、すべてが成功するとは限りません。
いまの会社のように、本当に欲しい人材を2人同時に連れてこれて、しかもうまくいっているケースは極めてまれです。なかには、頼まれて不本意ながら連れていく、他人から紹介された人間をわからないまま連れていく、といったケースもあります。
こうした何らかの妥協を強いられる場合は、そのほとんどが失敗に終わっています。だからこそ、部下を誘うときは慎重さが必要とされるのです。転職は、人生にかかわる重要な問題。それだけに誘う側にもそれなりの責任があります。「新しい組織で本当に力が出せそうか」「従来からいるメンバーとうまくやっていけそうか」。頭を悩ませます。
その上で、「問題ない」と判断したときにだけ誘うべきです。安易に誘うことは禁物。部下を連れていくときは、細心の注意が必要になるのです。反対に、上司についていく転職の場合も、細心の注意を払う必要があります。実は、私自身、5回目の転職ではじめてそれを経験したのです。5回目の転職は、前職のブロードバンド通信会社時代の上司についての転職でした。では、そこに至るまでの経緯を説明しましょう。
上司から「リストラが始まる。一緒に転職しよう」と誘いが
責任を取らされ、取締役から降ろされた上司は、会社側から退職勧告を受け、次の転職先さえ見つかればすぐにでも辞めそうな勢いでした。そして、退職勧告からほどなくして、私は彼に「ちょっと話があるんだ」と昼食に誘われました。

はじめは、会社から受けた酷い仕打ちに対する不満の数々と、会社の悲惨な現状に対する愚痴を聞かされました。そろそろリストラがはじまり、たとえ残ることができたとしても、給与の高い管理職は減給させられてしまう。親会社の資金も底をついていて、そろそろ撤退を考えている、そんな類の話です。話の内容自体は、社員の間でも噂になっていたこともあり、聞いても特に驚きはしませんでした。
ところが、耳を疑ったのは次の話です。その上司は、「こんな将来性のない会社なんか早く辞めて、一緒にもっとやりがいのある会社に転職しよう」と持ちかけてきたのです。しかも、転職先もすでに何社か見つけてあるといいます。
彼が口にした転職先候補は、いずれも名前の聞いたことがある一流企業ばかり。はじめは半信半疑だった私ですが、詳しい話を聞くにつれ、彼の話が本当だと思えるようになりました。(次ページへ続く)



