3つあった転職先の候補、もっとも給与の低い大手SIerに
5回目の転職先は大手SIer です。だれでも知っている一流企業です。SEにとっては、ある意味憧れとも言える理想的な転職先。何の迷いもなくすんなり決まった転職、きっとそう思われるに違いありません。
でも、このときも自分1人で転職活動はしていました。選択肢は他に2つあったのです。1つは、大手シンクタンク。仕事の内容はシステムコンサルタントで、給与はこちらの方が上でした。もう1つは、ベンチャーのシステム開発会社。こちらも、役員に準ずる待遇ということで給与ははるかに上の条件を提示されていました。
一方、大手SIer が提示した給与は前の会社とほぼ同じ。結局、悩んだ末に大手SIerを選びました。条件面では他の2社より下回っていたのにです。たしかに、大手シンクタンクが提示した高い給与や、ベンチャー企業のストックオプションは魅力でした。でも、その分仕事もハードなことはわかりきっています。成功したときの見返りは大きいでしょうが、反対に失敗したときはまた転職。結局はそのリスクがつきまといます。
やりがいを犠牲にしても、腰を落ち着けたい
不思議なことに、そのときはそこまで苦労して高い給与が欲しいという気持ちになれませんでした。それよりはむしろ、大手SIerという安定した環境の中で腰を落ち着けて働きながら、転職前と変わらない給与をもらうことの方が魅力的に感じられたのです。
私のことを昔からよく知る仲間は反対しました。「そんな変化のない仕事に満足できるはずがない」「きっと組織につぶされてしまう」など。懇意にしていた人材コンサルタントも、同じ理由から他のベンチャー企業を紹介してきました。実は、自分でもそう思っていた節があったのです。
仕事の内容が決まりきったものだというのはわかっていましたし、権限がないこともわかっていました。そして、やりがいという面でベンチャー企業に及ばないことも……。
「なぜやりがいを犠牲にしてまで大手SIer を選んだのか」きっとそう思われることでしょう。実は、当時私には、これを最後の転職にしたいという強い思いがありました。だから、仕事の面白さややりがいに多少目をつぶってでも、腰を落ち着けて働けそうな大手SIer を選んだのです。

なぜ最後の転職にしたいと思ったのか。1つは、私の個人的な問題です。転職することに、正直言って疲れていたのです。35歳で転職して以来、ずっと落ち着かない不安定な状態が続いていました。(次ページへ続く)



