社員への説明が足りない 会社に対し、不信感を抱く
44歳のときに、5回目の転職先の大手SIer を辞めました。勤続年数は2年10ヵ月です。退職することを知り合いの人材コンサルタントに伝えると、「同じ業界で働く人間のゴールとも言える会社をどうして辞めるのか?」と驚かれました。
でも、理由は簡単です。大手SIerで働くことが、私のゴールではなかったからです。手厚い福利厚生や社会的な信用を捨てても、この会社を辞めたいと思うゆるぎない理由があったのです。
それは、大手SIerが社員への説明責任(アカウンタビリティ)を一切果さない会社だったからです。説明責任とは、元々会計用語として使われていた用語で、企業が外部の利害関係者(顧客、取引先、消費者など)に、会社の財務状況などを説明する義務があるという意味で使われていました。
ところが、この説明責任は、利害関係者にだけ果せば済むものではありません。会社である以上、働く社員にも説明する義務があります。ところが、この社員への説明責任については、ついつい置き去りにされてしまいがちです。悪い情報については、とくにその傾向が強いようです。
でも、あえて言わせてもらえば、悪い情報こそ社員にきちんと説明する義務があります。たとえば、降格人事や減給などの本人にとってマイナスとなる情報。こうした情報こそ、本人へのきちんとした説明が必要です。この手の情報についての説明が不十分だと、後々しこりを残す結果になってしまうからです。
私自身、ベンチャー企業で経営に近いポストに就いていたとき、社員への説明責任には細心の注意を払っていました。給与ダウンの提示、降格人事の通達、退職勧告など、悪い情報については、本人が納得するまで話し合う時間を取っていたものです。
ところが驚いたことに、だれもが認める大手SIerは、その説明責任をまったく果さない会社だったのです。「まさか、そんな一流企業が」と思われることでしょう。でも、本当なのです。説明して欲しいと思っていたことについて、何の説明もなかったことが、会社に不信感を持つようになったきっかけでした。その経緯をお話しましょう。
担当プロジェクトでトラブル発生
あるシステム開発のプロジェクトを担当したときのこと。それは、納期も予算も非常に厳しい要求が突きつけられたプロジェクトでした。社内のリソースが限られていたこともあり、開発を委託する会社にも相当な無理を要求しなければなりません。
考え抜いた結果、無理を聞いてくれそうな昔から知り合いのシステム開発会社へ委託することを決めました。ところが、その会社もあいにく要員が不足していたため、さらに下請けの会社に再委託することになったのです。これがそもそもの失敗の発端でした。
その再委託した会社は、まだ設立間もない小さな会社でした。私が勤めていた会社と知り合いのシステム開発会社が、そしてそのシステム開発会社とさらに下請けの会社が契約を結びました。

ところが、スタートして数週間後、すぐに問題が起きたのです。委託先から来てもらっているエンジニア(経営者自身)のスキルが不足していたため、これ以上仕事を頼むのが難しい状況になっていました。すぐに他を探さなければなりません。私は、その再委託先との契約を打ち切ることにしました。こちらの要求通りの仕事ができないことから、作業委託費用についても減額を申し入れました。
私と契約先のシステム開発会社の責任者、そして再委託先の経営者の3人で話し合い、減額について合意が得られました。ところが、それで一件落着とはいかなかったのです。(次ページへ続く)



