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 はたして社会人は、これまでの人生をリセットし、子どものころからあこがれていた漫画家へと転身できるのか。後編では、「あしめし」の葛西さんと担当編集者のKさんに、具体的なハウツーとその道の険しさをうかがいます。【バックナンバーはこちら】



電話連絡がきちんとできたからデビューにつながった!

石渡:『あしめし』の中では、葛西さんと担当Kさんのかけ合いも面白かったです。もちろん、デフォルメしている部分もあるかと思いますが...。

担当K:まあでも、事実からキャラを作っていますし。

石渡:毎年、新人は大量に出てくるわけですが、Kさんと葛西さんの関係が続いた理由は何ですか?

担当K:電話をかけると、常に出たことです。

石渡:電話ですか?

担当K:ええ、電話です。こちアシスタントの斡旋や業務連絡など、さまざまな要件で電話をします。電話をしたらすぐ返事をしろ、とまでは言いませんが、編集の立場としては連絡がないと困ります。実は、電話に出なくなる新人の方が多いですね。その点、葛西さんはきちんと連絡が取れる方でした。

石渡:葛西さんは、意識的に電話に出ていたのですか?

葛西:はい。漫画というのは、漫画家が描いた後、編集者の手を経て完成します。この2者の連絡がとれないと、仕事がうまく進みません。ですから、連絡はきちんと取り合おうと意識していました。

石渡:漫画家でも、電話連絡などの社会常識が必要なことは変わらない、ということですね。

葛西:漫画家はひたすら漫画を描くので、電話を含めコミュニケーションが苦手、という人は多いような気がします。

社会人から漫画家への転身は、まれだがゼロではない

石渡:ところで、漫画は日本の輸出産業と言われるほど海外では有名です。まして、日本国内では、量に差はあれ読む人がほとんどでしょう。この連載の読者の中でも、今からでも漫画家になれるならなりたい、という人がいるかもしれません。社会人から漫画家になった例はありますか?

担当K:うーん、正直多くないと思います。一番有名なところでは青木雄二(※1)さんですが、例外中の例外です。

※1 青木雄二…代表作は『ナニワ金融道』。鉄道会社、パチンコ店員、デザイン会社経営などを経て漫画家デビューは44歳。『ナニワ金融道』は唯一の漫画作品だが、今なお愛読者は多い。2003年に58歳で死去。

葛西:本宮ひろ志先生(※2)も社会人転職組だそうです。ただ、ごく少数ではないでしょうか。少女漫画をやっていた人が一度、OLとして就職。その後、青年誌に参入する、という例は知っています。

※2 本宮ひろ志…代表作は『サラリーマン金太郎』『俺の空』など。中学卒業後、航空自衛隊に自衛隊生徒として入隊。その後、除隊し、漫画家になる。

アシスタントは20代後半まで 30代は1人で始めよ

石渡:社会人が漫画家になろうとした場合、アシスタント経験は必要でしょうか?

担当K:年齢にもよります。20代半ば、後半ぐらいならアシスタントとしてはぎりぎりセーフです。

石渡:セーフというのは?

担当K:アシスタントの雇用主である漫画家が若い場合、年上に対してリテイクなど指示を出しにくい、という事情があります。

石渡:それでは、30代以上だとどうでしょうか?

担当K:かなり細き道ではありますが、アシスタント経験をせず、自分で出版社を当たっていくしかないでしょう。社会人の場合、仕事や趣味などの経験則があります。それを商品としてまとめれば、場合によっては漫画家になれるかもしれません。

 とはいえ、漫画家志望者は小中学生など早い段階から漫画を描き続けています。その中の一部が漫画家としてデビューしています。イチローが一夜にして野球選手になったわけでないのと事情は同じです。

石渡:なるほど。その点、葛西さんはどうでしたか?

葛西:いや、実は漫画は普通に好きだった、という程度です。有名作品を手当たり次第読んだ、というわけでもなく、一時期はそれをコンプレックスに感じていたこともありました。

石渡:いや、それでも単行本を出されているのはすごいことだと思います。葛西さんは今、アシスタント歴5年目で単行本を出されたことになりますがそれは遅い方ですか、早い方ですか?

葛西:比較的、早い方だと思います。アシスタントを5年、10年と長くやっている人は多くいます。ただ、編集サイドは3年から5年で十分と考えているようですね。アシスタント暦1年程度で、即デビューという例はごくわずかでしょう。(次ページへ続く)


 
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INDEX
「アシでメシが食えんのか」の葛西さんに聞く! 社会人は漫画家になれんのか(後編)
電話連絡がきちんとできたからデビューにつながった!

社会人から漫画家への転身は、まれだがゼロではない

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著者プロフィール
石渡 嶺司(イシワタリ レイジ)

1975年北海道札幌市生まれ。私立北嶺中・高等学校、代々木ゼミナールを経て東洋大学社会学部社会学科に入学。卒業後、派遣社員、無職、編集プロダクション勤務ののち、2003年にライターとして独立。以後、大学・教育問題や学生の就職活動などを中心に評論・執筆活動を行う。全国の大学を見学して回り、2008年現在、300校を超える。著書は『転職は1億円損をする』『最高学府はバカだらけ』のほかに、『進路図鑑2010 』(光文社ペーパーバックス)などがある。2008年11月に刊行の『就活のバカヤロー』(光文社新書)が10万部を超えたほか、過去の著作はすべて書き下ろし・黒字化していることが自慢。

「ライター石渡嶺司のブログ」

 






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