子どもの看病でクビになった話に怒りをおぼえ、NPOを立ち上げ

駒崎氏は現在、病児保育を提供するNPO法人フローレンス代表理事を務めている。「病児保育」という言葉を聞き慣れない人も多いと思うが、急に子どもが熱を出した、具合が悪くなったという際に、働く親に代わって子どもを預かる保育サービスだ。駒崎氏は、大学在学時にITベンチャーを立ち上げ、数千万円の売上を挙げるまでの経営者だった。その「やりがいある」職を捨て、いわゆる「社会起業家」となったきっかけは何だったのだろうか。
「僕の母親はベビーシッターだったんですが、顔なじみのお客さんが、あるとき子どもが急に熱を出したので会社を休んだところクビにされてしまったんです。親として当たり前のことをして、職を奪われるなんて許せないと怒りを覚えました。それまでも何か世の中を変える、良くしていく仕事をしたいと思っていたのが、これをきっかけに具体的なイメージに固まっていったのです」
なるほど、だが失礼ながら日本では、NPOというと「本当に食べていけるのか?」と思われてしまいがちだ。なぜあえて株式会社ではなく、NPOだったのだろうか。
「たしかに日本では、ボランティアに毛の生えた程度の認識しかしてくれません。僕がNPOにしたのは、何よりそういう誤解をくつがえしたかったことがあります。欧米では病児保育のような社会的事業を行う際に、NPOにするのはごく当たり前のことになっているのです」
また日本では、NPOは利益を出してはいけない、だから食べていけないと思っている人も多いが、それもまったくの誤解だという。
「株式会社のように利益を分配してはならないだけで、本来の事業に使えばまったく問題はありません。だから利益を上げても構わないし、当然食べてもいけます。ただ、目的がお金儲けではなく、あくまで社会的な事業の推進であるという違いだけなんですね」
長時間労働をすればするほど、生産性は下がる
フローレンスでは、ワーク・ライフ・バランスのため、定時退社を推進。もちろん、代表の駒崎氏も例外ではない。それとは逆に、多くの会社員が行っている、残業・休日出勤は当たり前、プライベートを犠牲にする働き方の欠点とは、どのようなものだろうか。
「日本社会の働き方のもっとも大きな問題は、生産性の低さです。いわゆる経済先進国の中では最下位なんです。この生産性の低さを、長く働くことで補っているのです。しかし同じ仕事により長く時間をかければ、単位時間当たりの生産性は下がっていきます。この結果、長時間労働をするほど生産性が下がるという悪循環に陥っているんです」
長時間労働がなくならない背景には、日本の旧来からの労働観も大いに問題があると駒崎氏は指摘する。
「会社に長くいる人間ほど頑張っている=評価が高くなるという見方が根深くあります。本当はいかに効率よく成果を出したかで評価されるべきなのに、何ともおかしな話です。こんな考え方が続く限り、日本の労働者は会社の仕事だけにエネルギーをうばわれ、自分の子どもの看病や家族との会話といったことに満足な時間を確保できません」(次ページへ続く)



