「正社員でいられるだけもありがたい」という考えは危険!?

非正規雇用で働く人たちが不安定な雇用と低賃金に苦しむ一方で、社会問題となった「名ばかり管理職」のように、サービス残業や休日出勤も当たり前の長時間労働を強いられる正社員も増えている。雨宮氏によると、両者の問題は密接に関係しているという。
「派遣切りやホームレス化など、非正規雇用労働者の厳しい現状が報道されるのを見ていると、正社員の人たちは自分がどんなにひどい働き方をさせれらていても『今の会社にしがみつくしかない』と、何も文句をいえなくなってしまうような傾向があります。自分もいつそうなるか分からないという強迫観念から、会社側の無茶な要求にも応えようとして、限界を超えてがんばってしまう。これは非常に危険な状況です」
そこまで過酷な状況に直面していなくても、漠然とした不安を抱えながら働いている正社員は少なくない。たとえば、目の前の仕事を一所懸命やっているだけでは安心できず、隙間時間を必死にスキルアップ・キャリアアップのための資格取得の勉強などに充てるのも、根底には「脱落しないためには、競争に勝ち続けなければならない」という強迫観念があるのではないだろうか。
「がんばって仕事をしているのにもかかわらず、その自分を肯定すらできないというのは、もう病んでいるといわざるを得ません。これは子どもの頃からそういう人格を作り上げている教育の問題でもあり、社会自体が病んでいるということだと思います。それに、永遠に『勝ち続ける』ことなど絶対にできません。勝ち続けなければいけないという価値観は、競争に負けてしまったとき、勝てなくなったときに、自分の存在価値を否定してしまうことになるので、かなり危うい思考だと思いますね」
社会に過剰適応しようとして命が脅かされる場合も
「正社員の人たちが長時間労働などの過酷な状況を受け入れるのは、『そうしなければ社会で生き残れない』からだと思いますが、そんなやり方をしなければ生き残れない社会というのは、明らかにおかしい。そのおかしい社会や企業の価値観に過剰に適応しようとすると、いつか必ず無理が生じます。それが、過労死や過労自殺、そして鬱病といった結果を招いてしまうのです」
過労死や過労自殺は、すべての働く人にとって決して他人事ではない問題だ。また、特に若い世代では鬱病も増えている。雨宮氏によると、精神疾患による労災申請・認定数の約6割が20代~30代(厚生労働省発表 「平成20年度における脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について」より)だという。
「鬱病になって休職や退職してしまうと、復帰するのが難しいという問題があります。職歴に空欄ができてしまいますし、『鬱病で辞めました』と正直に話したらなかなか採用してもらえない。鬱病を隠してなんとか就職できたとしも、また同じような労働環境で再発してしまうというケースも少なくありません」
そうならないためにも、正社員として働く人も自分の身を守る方法を知っておくことが必要だ。具体的には、前編で紹介したように、労働基準法などで自分の権利が守られているのか調べたり、労働組合などに加入するという方法がある。個人でも入れる「インディーズ系労組」には、自分の会社に労働組合がない、あるいは組合があっても実質機能していないという正社員の人たちも数多く加入しているという。
しかし、そのような外部の労組に加入すると、会社側に目をつけられたり、圧力をかけられるといった話も聞く。その点はどうなのだろうか?
「ただ入るだけなら、まず会社にバレることはありません。具体的に会社と闘おうとか何か具体的なアクションを起こすつもりがなくても、やはり『保険』として加入しておくのはおすすめです」(次ページへ続く)




