部下を持つのははじめて…でも「気負わない」!

自分のことで手いっぱいで、とても部下を持つ自信がない……「はじめての上司」になったときの基本的な心構えはなんだろうか。
「はじめて上司になったときは、すごく気負ってしまう人も多いと思います。でも、なんでも最初は経験も知識も足りないわけです。ですから、『すごい上司』を気取るより、部下の育成を通して自分も学びたいということ、つまり最初はできる限りフラットな関係で一緒に頑張ろうという気持ちが大事だと思います。部下にいろいろと助けてもらうという姿勢が大切なのです」
そのうえで「視点の大小」を変えて話せることが大事、と酒井氏は言う。
「例えば、展示会のポスターの出来について、自分と年の変わらない部下と意見が違ってしまい、部下を説得できないとしましょう。正直なところ、部下のほうが正しいことを言っているような気もする。でも、それをあっさり認めると上司としてはカッコ悪いなぁというときがあるかもしれませんね。
そういうときは、『そもそもこの展示会の目的は?』といったようにずっと大きな話のような『そもそも論』にもっていき、ポスターがそれに向かう「手段」になっているかを吟味します。そのうえで、部下の意見の方がいいという結論にしてもカッコ悪くないでしょう(笑)。
行き詰ったときこそ、それを見るズームの度合いを変えるということは非常に大事です。『小事に取り組んでいる間は、大事を考える必要がある。そうすれば、小事はことごとくしかるべき方向に進む』というアルビン・トフラーの言葉のとおりです」
飲み屋の「雑談」や1対1の「議論」ではなく、「対話」を
しかし、そもそも部下と「コミュニケーション」が取れない……そんな悩みを持つ人もいるようである。部下とコミュニケーションを上手にとるための処方箋はあるのだろうか。
「東京大学の中原淳 准教授、産業能率大学の長岡健 教授著の『ダイアローグ 対話する組織』(ダイヤモンド社)という書籍にもありますが、『対話』というテーマは非常に重要だと思っています。同書の中では『雑談』と『対話』と『議論』は違い、『雑談』と『議論』では人は成長しないということを指摘しています。
『雑談』とは『雰囲気がゆるく、話の内容もゆるい』ものです。例えば飲み屋などでなんでも話せる雰囲気で交わされる雑談では、話の内容もゆるくなってしまい、時にはまじめな話があったとしても、最後はうやむやで終わる場合も多いはずです。これでは結局部下の成長は促せません。
逆に、『議論』では『雰囲気がかたく、話の内容もかたい』ため、お互いの理解を深めるのが難しい状況になってしまいがちです。
『対話』は、『ゆるい雰囲気でかたい、まじめな話をする』。この状態がいい。例えば、給湯室などでの会話の中から仕事上の進展が生まれる、といったことは、対話で良い結果が得られる一例です。
さきほど言った『そもそも論』を持ちこんで会社の方向性を語ってもいいでしょう。大きな視点から自分たちの仕事のことを話しているうちに自分たちの仕事の位置付けに気付かされることもあります。
普段十分にコミュニケーションが取れていない部下と、1対1のミーティングに持ち込む方がいますが、こうした形式ばったミーティングは、上司のほうが『部下のために自分の時間を使った』と自己満足を得るだけで、部下にはほとんど意味がないことが、あるアンケートの結果で裏付けられています。1対1のミーティグではなく、普段の仕事の中でコミュニケーションを取ることが重要です」(次ページへ続く)



