逃げるな! 転職先の上司が「良い」保証はない

転職理由の1位が「上司」だというのは、もはや定説である。しかし、酒井氏は上司から「逃げて」転職することに対して警鐘を鳴らす。
「日本では『マネジメント教育』が軽視されていることもあるせいか、上司として優れた人材は少ないのが現状かもしれません。日本では、基本的に良い上司に恵まれるチャンスは少ないないということを前提条件として、上司に問題がある場合は、上司の上司に相談してみるのも手でしょう。
しかし、その2つ上の上司までもが、どうにも尊敬できない人物だと、どうしたってモチベーションは落ちてしまう。そうなったら社内転職などを考えてみてもいいかもしれません。僕自身は、社外への転職は勧めません。だって、転職先の上司が優れた人材だという保証はないんですから」
しかし、尊敬できる上司もいないまま困難な状況に立たされると、モチベーションが落ちてしまわないだろうか。 困難な状況について、酒井氏は「修羅場」という言い方で独特の捉え方をする。
「人間は『修羅場』で成長します。『修羅場』とは、今の自分の能力では届かなくてアップアップしている状態のことです。そうすると、人はその状態を解決するために、勉強したり、人に聞いたりして修羅場を乗り越えようとします。このときの「背伸び」によって、人は成長するのです。
ですから、どれだけたくさんの『修羅場』を乗り越えてきたかは、ビジネスパーソン、ひいては人間としての大きさを決める要素になります。となると、成長のためには多くの修羅場を自分に引き寄せたほうがいいということになります」
尊敬できる上司がいない環境が自分の成長にとってプラスになるとは、逆転の発想だ。さらに「修羅場」は取りに行くもの、と酒井氏は言う。
「成長するための方法論として『経験か座学か』『受身か自発か』という2軸で4つのフィールドがあります【図】。『受身』×『座学』はもっとも身にならない。 だから、社員研修をいくらたくさん受けてもダメです。
『上司がダメ』で成長できないというのは、『受身の経験』を期待しているからで、『自発的に経験』を取りにいっていないということです。それでは、かりに上司が優れていても、結局、『やらされ仕事』になってしまいます。自分で『修羅場』を取りに行けば、尊敬する人が近くにいなくても『ベンチャー魂』を持ち続けることで、成長することができるはずです」

「相談されやすい人」になって修羅場を呼び込め
さらに、その修羅場を自然と引きよせるためには、「相談されやすい人になること」が大事だと言う。
「『ちょっといいですか?』という相談に対して、『全然オッケー』という姿勢でいると、部下の修羅場や、他の部署からの修羅場、経営上の修羅場も自分のところに持ち込まれるようになります。
部下にとっての修羅場は、上司から見ればもはや修羅場ではないものが多いのですが、数が多くなれば、自分も未経験の修羅場に出会える確率が上がります。修羅場が集まると、圧倒的に人材の成長速度が変わります。相談に対して面倒くさがっていると、修羅場を逃す、つまり成長するチャンスを逃してしまうということです。
相談の集まる人材の特徴は、『明るさ』にあります。最初は修羅場レベルのこと、つまり難しい仕事は自分のところには入ってきません。ですから、目の前の仕事を大事にしながら、修羅場、つまり大事な仕事を呼び込む必要があります。意外と日本では重要視されていないのですが、『明るいこと』『ポジティブであること』は、僕は 非常に大事な価値だと思います。明るくポジティブな人は、人から『相談されやすい』からです」(次ページへ続く)



