起業のきっかけは、旅先で目にした児童買春の悲惨な実態

売春宿に売られ、抵抗できないように電気ショックを与えられながら強制的に働かされていたため、腕に無数の火傷の跡がある6歳と12歳の少女たち──村田氏の著著『いくつもの壁にぶつかりながら』(PHP研究所)には、そんなショッキングなカンボジアの児童買春問題の実態が書かれている。
村田氏が初めてこの問題に触れたのは、大学2年の夏休みに東南アジアのNGOの活動現場を訪れるツアーに参加したときのこと。ある施設でHIVウイルスに母子感染している5歳の女の子に出会い、その子を産んだ後にエイズで亡くなった母親は「10代で売春宿に売られた児童買春の被害者」だと知った。
激しい怒りが込み上げ、「すぐに行動を起こさなければ」と強く感じた村田氏は、1人で活動を開始。大学で学生たちに自分が見てきたことを何度も訴え、NGOの勉強会などにも参加した。
そして、あるシンポジウムで、当時、東京大学の学生だった青木健太氏、本木恵介氏と出会う。社会起業家サークルの仲間であり、具体的な起業テーマを探していた2人は、「児童買春の被害から子どもたちを守りたい」という村田氏の思いに共感。こうして設立されたのが、NPO法人かものはしプロジェクト(設立当時は任意団体)だ。なお、青木氏と本木氏は、村田氏とともに共同代表を務める。
子どもたちを守るために、農村で職業訓練と雇用の機会を提供
かものはしプロジェクトは現在、コミュニティファクトリー事業、IT事業、サポーター事業という3つの事業を柱としている。その中で「本業」ともいえるメインの事業が、カンボジアで展開するコミュニティファクトリー事業である。
「児童買春の被害者には農村の貧困家庭の子どもが多いのですが、その大きな原因は農村の大人たちに仕事がないことです。貧しさゆえに、自分の子どもを売らざるを得ない状況になってしまうのです。そこで私たちは、貧困家庭の親たちの仕事を創出するために、い草や水草などの材料を使って民芸品を生産するファクトリー(工房)を農村に作り、職業訓練を行うとともに雇用を生み出す事業を展開しています」

ファクトリーで作られる民芸品は、ブックカバーやバッグ、コースター、財布など。これらを商品として出荷し、主にカンボジアの観光客向けのおみやげとして販売することで利益を得るという事業モデルだ。
「カンボジアのアンコールワットには、年間200万人近くの観光客が訪れます。そこでおみやげ用に売っている民芸品を調べてみたら、タイやベトナム産ばかり。それなら地元のカンボジアで民芸品を作れば、観光客に買ってもらえるだろうと考えたんです。当初は品質の問題でなかなか市場に受け入れてもらえませんでしたが、日本人の雑貨デザイナーの方にも指導を受けながら品質やデザインの向上に取り組み、取引先を少しずつ増やしていきました」
その結果、カンボジアでの売上は順調に増加。さらに、厳しい品質基準をクリアして、日本市場でも大手小売店で販売されるようになったという。(次ページへ続く)



