魚の目利き、超高級品を扱う鮮魚店『根津松本』
東京都文京区・根津にある魚屋『根津松本』は、高級料亭や高級寿司店と変わらない超高級な魚介類を扱う店だ。店主・松本秀樹さんの選び抜く美味しい魚を求め、遠方から通う富裕層の常連客も多い。一方、初めて店頭で値札を見て驚いたのは、筆者だけではないに違いない。同店で魚介をいくつか購入すると5千円、お刺身も加えればすぐに1万円を超えてしまうのだ。
魚の目利きである松本さんは、毎朝4時に起きて築地市場に出かけ、店頭に置く品を厳選する。「魚は、芸術のように美しい。僕は魚を見ることが大好きなので、築地市場に行くことが楽しいです」
魚の中でも超一級品は市場の表には並ばず、選ばれた人しか手に入れることができないらしい。6月頃であれば、たとえば鹿児島・出水のアジ、ハモ、島根・高津川の天然鮎、マナガツオ、甘鯛、白甘鯛(しらかわ)、千葉・竹岡の脂身がある120センチ位の太刀魚、神奈川横須賀・佐島の真鯛、香川・観音寺のトリ貝、浜名湖の巨大アサリ等を仕入れる。店頭価格の一例は、以下のとおり(参考価格)。
- 北海道 紅鮭 一切 1,000円
- アジ 1本 1,000~2,000円
- イワシ 1本 500~1,200円
- 天然鮎 1本 1,000~2,000円
- 金目鯛 一切 1,575円
- 白いか 100g 630円
- 引き縄漁で獲れたカツオの刺身 1人前 1,500~2,000円
松本さんの魚に対する姿勢は、徹底している。魚介の鮮度はすぐに落ちてしまうので、市場が休みの日には、店頭に鮮魚は並べない。鮮魚の他に、干物、煮付け、刺身セット等の加工品も扱う。干物まで自家製だ。「メザシ以外の干物はすべて、うちの店で作っています」
役者になりたくて東京へ 築地市場で見事な魚に心躍る

松本さんは、1969年に北海道で生まれた。実家は、魚屋を営んでいる。「小学生くらいの時は、店を手伝っていました。多くの魚を見て、自然と目が肥えたようです」
学生時代はロックバンドを組み、ドラムを叩いていた。20歳のとき、「役者かミュージシャンになりたい」と上京。役者を目指しながら、土木作業のアルバイトで生計を立てた。数年後、家族が病気になり、北海道の実家に戻った松本さんは、家業の魚屋を久しぶりに手伝った。
「改めて店頭に立ってみると、『鮮度の良い魚は、なんとキレイなのだろう』と感激しました。ショーケースに魚をキレイにならべると、本当に美しい。父親が『魚屋は芸術だ』と言ったのを聞いてから、魚屋の仕事が面白くなり、ハマってしまいました」
それからは真っ赤なキンキ、銀色のマナガツオ、アマダイ……、魚を店頭にキレイに並べては満足する毎日。どんどん魚屋の面白さに、ハマっていった。
帰省した1年後、まだ役者になる夢は諦められず、東京に戻ることにした。羽田行きの飛行機チケットだけを手に、再び上京。料理屋で働いた後、路面店の魚屋に就職した。「居酒屋に魚を卸していた店だったので、居酒屋さんから魚の調理法を聞き、料理にも関心を持つようになりました」
築地市場に仕入れに行くと、今まで目にしたこともないような見事な魚を目にして、心が躍った。「もっと上等で美しい魚を仕入れたい」と思うようになったと言う。(次ページへ続く)



