司法試験18連敗から、日本を代表する一流弁護士の座にまで上り詰めた鳥飼重和さん。前編では、勉強法や苦労した経験を別のスキルとして活かす方法などをお届けしました。後編では、メンタルの強さの秘訣や仕事をしていく上での考え方などについてうかがいます。
ニッチな「税務訴訟」での苦労 仕事も連敗から始まった

(以下、鳥飼さん談) イソ弁時代、私は独立するまでに2つの法律事務所で働いていた経験があります。どちらも小さな事務所でしたから、掃除、お茶出し、電話当番などの雑用も当然の仕事として引き受けていました。
そんななか、事務所の先生からいただいた仕事以外に、個人でも仕事を引き受けるようになりました。もちろん、最初は単価の安い小さな仕事ばかりです。しかし私は、取るに足らない仕事でも断ることなく、引き受けていました。自分でやりきれない仕事は弁護士仲間にまわしていました。
こうしてさまざまな仕事を引き受けているうちに、法律上の問題で困っている人が多いにも関わらず、専門の弁護士がほとんどいない分野があることに気づきました。それが、現在私が専門としている税務訴訟の分野だったのです。
税法に詳しい弁護士があまりいないことに気づいた私は、金融財政事情研究会でファイナンシャル・プランナーの養成講座を申し込むことにしました。銀行や証券などの金融機関の職員の方が参加する講座です。
ところが、この講座に弁護士が参加した前例がないと、最初はあっさりと参加を断られてしまいました。しかし、相手に断られたくらいで諦める私ではありません。「税務訴訟の分野を極めたい」という熱意で事務局に何度も電話をかけ続け、最終的には相手が折れるかたちで私の講座参加が実現しました。
また、税理士だけが加盟する協会に入会したときも「変な弁護士が入会してきた」とか「どうして弁護士が税理士の協会に入会するのか」と、拒絶に近い雰囲気がありました。
しかし、次第に1人、また1人と税理士の知り合いが増えていき、顧問先が抱えている税務の問題を相談されるようになりました。年を重ねるごとに税理士の先生方からの信頼関係が広がり、今では日本税理士会連合会の顧問まで務めさせていただいているわけですから、人生とは分からないものです。
今でこそ9割近くの勝訴率を誇る税務訴訟も、最初の7~8年間はまったく勝てませんでした。しかし何度も負ける中で、敗因を分析しているうちに、「裁判官の立場で考える」という勝つための戦略が見えたわけです。
私の場合は、何をするにも前例のない場面に出くわすことが多いので、その度に道なき道を作らなくてはなりませんでした。しかし私は数々の連敗を経験したことで、どんな険しい道でも切り開いていけるだけの信念と足腰の強さが身についていますから、多少の困難などまったく問題ありません。
私の人生は、司法試験でも、予備校講師でも、税務訴訟でも、最悪の状態から始まって、最終的には最高の状態へと駆け上がるパターンが多い気がします。(次ページへ続く)



