栄光を目前に吉本興業から去った芸人、南野やじ
男はこんな青写真を描いていた。テレビをつければ自分の姿が映り、街中には彼のギャグを真似する人々。人気は最高潮――いわゆるブレイクだ。否、彼だけではない。ファン、芸人仲間、スタッフ、誰もが彼のそんな飛躍を信じて疑わなかった。
2002年、ピン芸人の大会「R-1ぐらんぷり」の記念すべき第一回目。決勝戦に華々しく現れた男が繰り広げたのは、袈裟を着て木魚を鳴らし、四文字熟語風に書かれたフリップの文字を経文のごとく唱える「お経漫談」。
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そんな他に類を見ない斬新な芸が話題をさらい、お笑い系の芸能事務所、最大手である吉本興業に鳴り物入りで所属。お笑い番組「エンタの神様」「笑いの金メダル」「爆笑オンエアバトル」、そればかりか「筑紫哲也NEWS23」にまで出演した。
そんな日々が突然終わりを告げるなど、いったい誰が予測できただろう?
2006年、男は吉本興業を去った。そのころを境に仕事は激減。テレビをはじめ、各メディアから彼の姿は消えていく。ついには、毎年決勝、準決勝へとコマを進めてきたR-1ぐらんぷりで、まさかの初戦敗退。
芸人として「最後の選択」――つまり「続ける」のか「やめる」のか――を突きつけられ、男は苦悩する。これがやめどきなのか……。

男は名を『南野やじ』という。
彼はなぜ「このままいけば順風満帆」だと誰もが信じて疑わなかった吉本興業時代に終止符を打ったのか。ブレイク寸前までのぼりつめながらも、一気に地の底に叩き落されるかのような絶望を味わった男の苦悩とは? いかにして真っ暗闇のどん底を乗り越えてきたのか?
芸人・南野やじ。光と影、栄光とどん底とを味わった男が、ありのままに本音を吐露する。






