「断る力」を実践するには時期尚早
企業が頭を下げてでも欲しがる人材に成長するため、2010年から実践していただきたいことをお伝えしています。今回は、「断らない力」です。お気づきのとおり、勝間和代さんの書籍『断る力』(文春文庫)から派生したアイデアです。
この本はベストセラーとなり、大きな影響を与えました。なかには、「断る力」を下手に真似し、頼まれた仕事を部下がやらない、上司が部下の相談を断るなど、混乱している職場もあります。
とはいえ、私は書籍『断る力』を否定するつもりはありません。あの本のもっとも重要なメッセージは、「自分の軸を持つこと」だと解釈しています。ただし、ほとんどの若いビジネスパーソンは、まだその軸が出来上がっておらず、「断る力」を実践するには時期尚早なのです。
自分の軸は、さまざまな仕事を経験することで、少しずつ形成されて行きます。ですから、「断る力」を駆使したいなら、まずはどんな仕事も「断らない力」が必要になるわけです。
「断らない」ことが次の仕事を呼ぶ
私は2009年の1月末に株式会社バンダイを退職し、従業員数6名のベンチャー企業に転職しました。さらに、就職ジャーナリストとしての活動も本格化させました。この時に覚悟したことがあります。それは「仕事は絶対に断らない」ということです。
自ら営業して獲得した仕事はもちろん、依頼があれば、スケジュールがどうしても合わないもの以外はほぼすべてお受けしました。気づけば、約1年間でのべ7,000人の前で約70回講演し、コラムを約60本、本を5冊書いていました。今も、おかげさまでたくさんの仕事のご依頼をいただいています。仕事の内容も大きな仕事、意義のある仕事が増えてきました。
相当忙しかったのですが、体調も崩していません。1日6時間は寝ていますし、友人・知人と飲みに行く時間、家族と過ごす時間も確保できています。年収も上がりました。この過程で、生産性も急激に高まり、資料作成や原稿作成を行うスピードも向上、得意分野にも気づきました。「断らない力」の実践により、仕事を獲得し、自らを成長させることができたわけです。
「断る」のは仕事が増えて、自分の軸が見つかってから
もともと、「断らない力」のヒントをくれたのは友人でした。彼は大企業を辞め、フリーのライター、編集者として独立しました。そして、依頼される仕事をがむしゃらに受け続けました。数年を経て、仕事が軌道に乗ってからようやく、専門外の仕事を「断る」ようになったそうです。
私も、さすがにまったく自分の専門外の分野の仕事や、明らかに自分にとって不利な条件の仕事、現在の能力の3倍を超えていると思われる程度の仕事は断っています。先日も「貧困」に関するテーマでテレビ出演の依頼があったのですが、明らかに専門外なのでやんわりとお断りしました。
もっとも『断る力』によると、勝間和代さんは8割~9割の仕事を断っているそうですが、『しがみつかない生き方』(幻冬舎新書)で香山リカさんがツッコミを入れているように、普通の人は「断る力」が必要な勝間さんほど仕事がないのです。軸が出来上がった後でも、断る仕事は1割、残りの9割の仕事は覚悟を決めてやり切る勇気を持ちたいところです。(次ページへ続く)


